木造火王水王面
歴史の風格を感じさせる火王面(右)と水王面(左) | 古文書には面を掲げ歩く人の姿が描かれています |
今月は文化財の宝庫、水田天満宮に大切に保管されている、一対の木造面「火王水王面」について紹介します。
2つの面が作られたのは、裏面に書かれた墨文字から天文10年(1542年)ではないかと言われています。面の素材はヒノキで「火王面」は朱色、そして「水王面」は黒色の漆が塗られ、目や歯の部分には、金箔が施されています。また、「火王面」と「水王面」には、それぞれ物事の最初と最後をあらわす「阿」(あ)「吽」(うん)の表情が、彫り深く刻みこまれています。その大きさは24センチ×17センチとほぼ人間の顔と同じサイズですが、ともに天狗のように長く伸びた鼻が特徴的です。2つの鼻を比べてみると「火王面」の鼻先は「水王面」よりもわずかに高く、形も先端部分が反り上がっています。なぜ形が異なるのか、はっきりしたことは分かっていませんが、後世に補修されたからではないかと考えられています。両面とも現在は、表面の漆がかなりはげ落ちてはいますが、面に残るその深い色合いは中世の文化を私たちに感じさせてくれます。
この「火王水王面」は、昭和30年ごろまで10月25日の「水田天満宮神幸祭」の時に、御輿に入ったご神体を先導するための祭器として、三叉鉾に取り付けられ使われていました。現在ではその光景をみることができませんが、当時の様子は江戸時代に書かれたといわれる同宮所蔵の絵巻物に、鮮明に描かれています。
(出典:筑後市史第二巻)
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所在地:(水田天満宮所蔵)