シリーズ いま人権・同和教育は
9 月 8 日は「国際識字デー」
世界の識字の状況
1965年、国際連合教育科学文化機構(ユネスコ)は、世界中の国々や人々に識字の重要性を訴え、世界の識字率を向上させることを狙いに、9月8日を「国際識字デー」に制定しました。
識字とは、文字を読んだり書いたりする力のことです。日本では「文字を読み書きできること」は当たり前のように考えられますが、世界には十分な教育を受けることができず、文字を読み書きできない人たちがいます。
日本ユネスコ連盟は「世界寺子屋運動」として、子どもたちに読み ・ 書き ・そろばんなどを教えた日本の 「寺子屋」
を発展途上国に作り、誰でも読み書きや計算ができるよう教育の機会を提供しています。
識字問題による影響
文字が分からないと、日常生活に支障をきたしたり、薬の説明や食品標示が読めないことで命を危険にさらしたりすることがあります。また、自分が希望する仕事に就くことができないなど、満足のいく生活を送れないことにもつながります。
識字問題の原因は、貧困・差別・戦争などによって、教育環境が不十分なことです。また、識字率の低い地域では、特に女性の識字率が低い傾向にあります。
識字学級を通して
日本では、部落差別により教育の機会を奪われた人々が、文字を学ぶことで自らの状況を改善し、解放を求める運動を実施。1963年、福岡県筑豊地区の被差別部落の女性たちにより「識字学級」が始まると、日本全国に広がっていきました。 「識字学級」 とは、学校教育を受けることができず、読み書きの能力が十分でない人々が、その力を取り戻すために学習する場のことです。
当時、 「女には学問は要らん」という考え方や貧困により、学校に行けない子どもたちがいました。そのような状況の中、 「識字学級」で文字を覚えた女性がいました。彼女は、子どもの頃に差別で故郷を追われ、嫁いだ家も差別の厳しいところでした。しかし、字を習うことを通して、何が正しく、美しいか、何が醜いものかを理解し、嫁ぎ先で見る夕日こそが美しいと思えるようになり、次のような文章を書いています。
「夕日は美しかった」
このねこのひたいほどのせまい土地にしがみつき、はいつくばって生きてきた私にとって、この地はうらめしい所でしかなかったのだが、字を習い、私はふしぎに、ここのけしきが美しいと思い出した。田んぼの中でかまの手を休めてこしをのばしたとき、ここの空の色がこんなにきれいだったのか、夕日がこんなに美しいとはしらなかった。
この女性のように、文字を学び、自分を表現することで厳しい差別の中でも誇りを失わずに生き抜いてきた人々がいたのです。
識字の現状
今も残る識字学級(198級)の現在の課題は、高齢化や国際化により、参加者の減少や人材不足が進んでいることです。 識字は生きるための第一歩、貧困や差別から抜け出すために必要なものです。
【参考資料】
▼部落解放史ふくおか第25号
▼全国識字学級実態調査 (2010年)
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