筑広報ちくご 令和4年3月号18 今から100年前の1922年(大正11年)3月3日、長い間差別に苦しめられてきた被差別部落の人々が自ら立ち上がりました。この日、全国水平社を創立し、岡崎公会堂(京都府京都市)で創立大会が開かれました。 この創立大会に福岡県から唯一参加した人がいました。後に福岡県議会議員や衆議院議員を務めた嘉穂郡(現嘉麻市)出身の僧侶、田中松月です。田中松月は、その時の感激を差別とたたかう決意に変え、生涯を懸けて部落解放運動を推進しました。※田中松月については、県教育委員会作成の人権教育教材集「かがやき」や「あおぞら2」に収録され、市内の小学6年生が学んでいます。 全国水平社の創立大会では、同団体の理念を表したとされる「水平社宣言」が満場の聴衆の中で読み上げられました。 日本で最初の人権宣言ともいわれる同宣言には、「人間を尊敬することによって自ら解放せんとする」という文言があります。これは「人間は元来いたわるべきものでなく尊敬すべきものであり、差別を克服するためには同情(いたわり)でなく、尊敬が必要だ」ということを示しています。 その根本的な考え方は、現在の人権問題にも十分当てはまるのではないでしょうか。 今年1月から、オミクロン株によるものとみられる新型コロナウイルス感染者が急増しました。国内での感染者が増え始めた2年前、感染者個人の名前や行動を特定し、SNSなどを通してインターネット上で公表したり非難したりする行為が大きな問題になりました。SNSは匿名で発信することができるため、人格を踏みにじるような書き込みも相次ぎました。当時ほどではないかもしれませんが、このようなインターネット上の誹ひ謗ぼう中傷などは現在も後を絶ちません。 誤解や偏見による誹謗中傷、いじめなどの差別を行うことは決して許されるものではありません。差別的な発信をする人たちの多くは、人権侵害をしているという自覚はなく、自分が正しいと思い込んでいます。また、社会への不満やストレス、不安を抱え込み、そのはけ口としてインターネット上に書き込むことで、心の安定を保とうとする悲しい現実もあります。 差別は、「される側」だけでなく「する側」も不幸にしてしまうものなのです。 「人の世に熱あれ、人間に光あれ。」という言葉で水平社宣言は結ばれています。差別を受けてきた自分たちだけでなく、全ての人の解放を願うこの言葉は、100年の月日を経た今もなお輝きを放っています。 誰もが生きづらさを感じることなく生活するために、「他者への同情でなく、尊敬」という水平社宣言の精神は大切な視点の1つです。互いに尊敬し、今を生きる私たちが力を合わせて「ぬくもりのある社会」そして「かがやく未来」を作っていきましょう。「これでなっとく!部落の歴史」(上杉聰〈解放出版社〉)全国水平社創立100周年全国水平社創立100周年尊敬するということ尊敬するということ差別は、する側も不幸に差別は、する側も不幸に【問合せ】人権・同和教育課(☎65-7039)すべての人に、熱と光をすべての人に、熱と光を参考文献シリーズいま人権・同和教育は=人権=~水平社宣言の精神に学ぶ~市役所からのお知らせ市役所市役所からのお知らせからのお知らせ人の世に熱あれ人間に光あれ
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