=社会教育・人権=広報ちくご 令和3年5月号19 「おじいちゃん、一緒にレオンの散歩に行ってもらいたいんだけど…。」 おじいちゃんは、テレビを消して、「おう、まかせとけ。」と言って立ち上がった。 おじいちゃんは、うれしそうだった。 わたしも何だかうれしかった。 高齢者への配慮は、思い込みや偏見にとらわれずに、相手の気持ちを理解しようとすることが大切です。相手の気持ちを考えず一方的に行われると、時に人間の尊厳を侵すことがあります。 本教材を通して、高齢者への配慮の在り方を考え、互いが人や社会の役に立っていると感じること(自己効力感)が大切です。 人権教育学習教材集「あおぞら2」(県教育委員会) 県教育委員会では、学校での人権・同和教育を進めるために、教材集「あおぞら2」を作成しています。 今回は、中学校用教材で高齢者の人権をテーマにした「どうしたんだろう」を紹介します。 2年前、おばあちゃんが病気で亡くなって、おじいちゃんは一人で暮らしていた。 一人になったおじいちゃんを放ってはおけないと、お父さんとお母さんが話し合い、うちに来てもらうことになった。 おじいちゃんは、前の家でやっていたように、家の片づけや庭の手入れなど、せっせと働いた。 ある日、いつものように片づけをしようとしているおじいちゃんに、お母さんがこう言った。 「おじいちゃん、片づけなら私がするから、おじいちゃんは何もしないで、ゆっくりしていてくださいね。」 その夜おじいちゃんが寝た後、家族で話していたら、おじいちゃんの話題になった。 「体力もなくなっているだろうし、おじいちゃんの身の回りのことは、私たちがやってあげたほうがいいと思うのよね。」と、お母さんが言った。 お父さんも、「そうだね。ゆっくりしててもらった方がいいだろうね。」と続けた。 私も、おじいちゃんのことを考えると、身の回りのことはやってあげた方がいいのかなあと思った…。 次の日、うちで飼っている犬のレオンの散歩をしようとしていたおじいちゃんに、お父さんが言った。 「レオンは力が強いからね。引っ張られて転んだら大変だろ。レオンの散歩は俺たちがするから、おじいちゃんはしなくていいよ。」 おじいちゃんは、「しなくていい、か…。」と、つぶやき、部屋にもどった。 それから、しだいにおじいちゃんは家のことをあまりしなくなり、自分の部屋で過ごす日が多くなった。 そのうち、おじいちゃんは部屋から出てこなくなった。 おじいちゃん、どうしたんだろう。 わたしは、「しなくていい、か…。」と、つぶやいた時ときのおじいちゃんの顔を思い出した。 そして、自分の部屋でテレビを見ていたおじいちゃんに、声をかけた。シリーズいま人権・同和教育は高齢者の人権「どうしたんだろう」【問合せ】人権・同和対策室(☎7039)「どうしたんだろう」(抜粋)参考配慮の在り方を考える
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